記 長野 真


 長野 真(20)、菊地則仁(22)が1995年夏剱岳、穂高岳、谷川岳の岩場でメジャールートばかり20本余り登った。以下はその報告。

剱岳(7月30日~8月11日)

7/30急行「きたぐに」で一路富山へ。 7/31立山アルペンルートで室堂入り。  11泊分の食料と装備で45kgの重荷にバテながら真砂沢キャンプ場にBCを設ける。

8/1快晴  長次郎谷を登り八ッ峰・峰フェースへ行く。  1. 八ッ峰・峰Cフェース剱稜会ルート(5P、2.5h)  2. 八ッ峰・峰Aフェース中大ルート(3P、1h)

8/2雨、沈。 8/3小雨  とりあえず出発して、Dフェースの取り付きまで行ったが雨がやまないので中止。ギアをデポしてBCへ戻る。 8/4晴れ  八ッ峰のDフェースとBフェースを登ってから三ノ窓まで行く予定でビバーク用具一式を持って出発。  3. 八ッ峰・峰Dフェース富山大ルート(6P、2.5h)  4. 八ッ峰・峰Bフェース京大ルート(3P、1h)  長次郎谷右俣をつめるがクレバスが切れており苦戦しながら池ノ谷乗越にたどりつく。不安定なガレ場の池ノ谷ガリーを下り三ノ窓にツエルトを立てる

8/5霧雨  外は真っ白なガスと小雨なのでしかたなしに沈。

8/6晴れのちガス  チンネを登ってから食料補給のためBCへ戻る。  5.チンネ中央チムニー~aバンド~bクラック(6P、2h)  北方稜線を通り池ノ平から下るつもりだったが小窓付近で濃霧のため踏み跡を見失うが、なんとか小窓雪渓に下り立って無事BCに帰る。

8/7くもり  再び長次郎谷を登り5、6のコルより八ッ峰上半を縦走し、クレオパトラニードルをまいて三ノ窓へ行く。ガスが切れてきたので登攀開始したがまたすぐガスった。  6.チンネ北条・新村ルート~gチムニ~cdクラック(6P)

8/8晴れ後霧のち小雨  左稜線に取り付くが、取り付きを間違えて1時間ロスをした。3ピッチ目からガスってきて核心のT5では小雨が降ってきた。高度感もなく残念。  7.チンネ左稜線(14P、7h) 8/9ガス時々晴れ  三ノ窓ビバークを終え、本峰南壁を目指す。  8.本峰南壁A2稜(6P、2.5h)  長次郎谷左俣を下降し熊の岩をトラバースし・峰へ向かう。  9.八ッ峰・峰CフェースRCCルート(6P、2.5h)

8/10雨  源治郎・峰正面を狙っていたが沈。

8/11大雨  びしょぬれになりながらいやいや下山する。下界におりると暑い夏の日差しが待っていた。この日の夜に夏山合宿穂高班と富山駅で合流するため洗濯などをしてしばし下界を楽しむ。

 

穂高ジャンダルム、錫杖岳(8月12日~8月18日)

8/12  夜中に中島さん、山脇さん、村上さんと富山駅で合流して新穂高温泉へ向かい、仮眠する。滝谷遡行の目的で雄滝の下まで行くが雪渓の状態が悪いので今回は敗退。滝谷出合小屋泊り。

8/13晴れ  白出沢を上がり穂高山荘へ。盆シーズンなので人だらけ。夏山JOYだ~。

8/14晴れ  10.ジャンダルム飛騨尾根(6P,1.5h)  西穂の稜線を歩く。荷は軽いので軽快にとばす。

8/15  西穂ロープウェイで下山。温泉で汗を流し、次の錫杖岳の買い出しをする。みんなと別れて入山。2時間ほどで、錫杖岩舎に着く。岩舎から見える巨大な前衛フェースは非常に迫力がある。

8/16晴れ  左方カンテに取り付くが岩峰会で事故があった場所だけに緊張して無言でザイルを結び合う。下降は同ルート懸垂。岩舎に着いたとたん夕立。  11.錫杖岳前衛フェース左方カンテ(10P、4.5h)

8/17晴れ  1ルンゼ本流ルートに取り付いたつもりが(後で判明したのだが)1ルンゼ左ルートを登った。下降は烏帽子岩をまいて中央稜を越えて錫杖沢左俣を下る。  12.錫杖岳前衛フェース1ルンゼ左ルート(10P、4.5h)  テントを撤収して下山。高山駅にてステーションビバーク。

8/18  青春18切符にて京都へ帰る。

 

谷川岳(9月3日~9月10日)

9/3  京都クライマーズクラブの佐野さんと長野の二人で菊地の実家の東京めざし青春18切符で行く。立川駅で菊地に合流し、この日は菊地宅泊り。

9/4  立川駅より電車を乗り継いでようやく土合駅につく。長い階段を上りやっと憧れの谷川岳に到着。車道を2時間くらい歩いて一ノ倉沢出合につく。ここから見える無気味で巨大な岩壁しばしぼー然とする。724人もの遭難が出たところだけあっていたるところにレリーフがあって気味が悪い。

9/5雨、沈。  やはり谷川岳は天気が悪い。

9/6小雨  じっとしていてももったいないので、日本百名山谷川岳をピークハントする。稜線は暴風雨だったが立派な非難小屋があり安心する。下へ下ると晴れていた。雨ではどうしようもなく気持ちがあせる。

9/8くもり  いまにも雨が降り出しそうだったが出発する。テールリッジ末端までの雪渓のトラバースがやらしい。テールリッジを登り烏帽子スラブをトラバースし南稜テラスへ着く小雨が降り出したがカッパを着て登攀開始。谷川岳の岩は濡れるとよく滑る。全体的に傾斜が緩い。下降は同ルート懸垂  13.谷川岳烏帽子岩南稜(6P,2.5h)

9/9晴れ  土曜日なのでびっくりするくらいのテントが夜中に出現した。多くのクライマーが色々なルートに取り付いている。我々は中央稜へ向かう。岩が乾いていてフリクションがよくきく。下降は北稜を懸垂したがうわさほど悪くなかった。  14.谷川岳衝立岩中央稜(7P、3h)  その日のうちに下山をする。水上まで行き温泉に入り温泉街をぶらつく。水上駅にてステーションビバーク。

9/10  「青春18切符」使用期限最終日。佐野さんは2260円で京都まで帰る。長野と菊池は次の穂高の準備のため東京に残る。菊地宅にて休養、泊。

 

穂高(9月11日~9月23日)

9/11  夜行急行「アルプス」にて松本へ。

9/12晴れ  またも45kgぐらいの荷をかついで穂高街道を歩く。晩夏の風景の涸沢へBCを設ける。

9/13晴れ  北穂南稜をへて滝谷へ行く。  15. 滝谷ドーム中央稜(5P、2.2h)  16. 滝谷ドーム北壁左ルート(3P、1.5h)  ドーム北壁では慣れない人工登攀にてこずった。 9/14小雨、沈。

9/15雨後午後晴れ  昼から5、6のコルまで偵察に行く。

9/16雨  超大型台風接近中。沈が続く。AM7:00~PM8:00までFM長野を聞いていた。

9/17風雨のち晴れ、沈。  戦後最大超大型台風接近。苦悩の4連沈。精神的にまいった。

9/18快晴  この夏一番の冷え込み。テントがバリバリに凍る。奥又白を目指す。雪渓はだいぶ無くなっていた。C沢をつめて右岩稜に取り付く。B沢は落石の巣だ。  17.前穂東壁右岩稜古川ルート~北壁~Aフェース(9P、5h)  登攀終了後、一般道より奥穂へ登頂、ザイデングラードを下る。

9/19晴れ  滝谷へ行く。滝谷は日が当たらないのでとても寒い。岩からしみ出した水が凍り、つららになっている。手袋をはめながら登る。菊地が指に赤ギレをつくってしまった。  18. 滝谷ドーム西壁雲表ルート(5P、2.5h)  北穂山頂へ行き山小屋のテラスでのんびりした後下山。

9/20快晴  奥又白を目指し5、6のコルを越えC沢を少しつめてチョックストーンの右をまいてそのまま右上する踏み跡に入る。T1テラスでザイルをつける。1P目、ルートを間違えて登るが2P目に気付き壁の中で迷う。1時間ほどロスして、正規ルートに入る。ハイマツテラスに張り出すオーバーハングを越えてトラバースしてしばらく行くと終了。あっけなくハイマツ帯の中で終わった。右にトラバースして北尾根に出て下降する。  19.前穂北尾根四峰正面壁北条新村ルート(6P、4h)

9/21快晴  涸沢から横尾手前の1ルンゼ出合まで下り1ルンゼをつめる。丸太橋で危うくすべり落ちそうになる。T4尾根末端までくると屏風岩が圧倒的にそそり立つ。この日は平日で他にだれもいなく屏風岩貸し切り状態である。変化のあるルートですごい高度感を味わい無事終了。  20.屏風岩東壁雲稜ルート(8P、4h)

9/22快晴  BCを撤収する。横尾手前の河原に荷物をデポして、再び屏風岩へ行く。太陽の光が体に快よく、ビレーしている時ついうとうとしてしまう。東稜の3P目のテラスが崩壊していて緊張した。下降は同ルートを懸垂する。  21.屏風岩東稜ルート(6P、4h)

9/23小雨  うまいぐあいに下山日は雨、ちょうど週末で上高地は人だらけ。松本で汗を流し、急行「ちくま」で帰京

 

唐沢岳幕岩(10月21~10月22日)

10/21  今年最後の本チャンと気合を入れて出発。朝6:20京都発、昼12:00頃七倉着。周りの山が紅葉し、けっこう観光客が多い。13:30七倉発。長いトンネルをいくつも越え唐沢出合へ。ここより唐沢をつめるが石はよく滑るし、アルミハシゴはつぶれているし、けっこう悪い。大町の宿へ行くルンゼを間違え、暗くなりはじめる頃(17:00)大町の宿へ着く。

10/22晴れ  この日は幕岩全体で2パーティだけでとても静かだ。大凹角ルートに取り付く。先行パーティの後を登る。岩が冷たく手がかじかむ。全体的にブッシュが多く、上部はチムニーに入るため露出感もなく、12:00登攀終了。下降は右稜を懸垂。大町の宿へもどり下山開始15:00。唐沢を下るのに手間取り谷の途中で日が暮れまっ暗。あともう少しだったのでヘッドランプを出すのをしぶると沢にはまったり、踏み跡を見失ったりでヘトヘトになりながら車道へ出た。(19:00)まっ暗なトンネルをひたすら歩き七倉着。温泉に入って帰京。  22.唐沢岳幕岩大凹角ルート(10P、5h)

今年の夏は数多くのルートを登ることができた。途中でモチベーションが下がったり、いやになったこともあったが目標をやりとげてよかった。これをステップにして次の目標に向かってチャレンジしたいと思う。