YAH! YAH!ルート開拓

九州宮崎県大崩山系・小積ダキ中央壁上部呉越同舟ルート 5.11b AA26ピッチ 165m

記 明川浩之


メンバー: 明川浩之、唐橋芳和、永井久雄(同人蜘蛛の糸) 期間 1993年4月30日~5月4日
私の記憶に間違いがなければ、国内において1972年に拓かれた、赤沢山針峰槍沢側正面壁関西岩峰会ルートに次ぐ、我が会でのルート開拓記録ではないだろうか。私自身ショートルートにおいては、関西を中心に、最近では東海方面まで足を伸ばし、ルート開拓に精力を注いできました。記録というのは単に会の名前を残したい、自分の名前を残したいためであるが、これらの欲望は知名度を上げたいためでもある。これは結果論であるが、なぜかこだわってしまう部分でもある。あくまでも自己満足にすぎないのだがどうせ残すのならと欲が出るし、公にも認めてもらいたい。私の自己満足の世界かもしれませんが、会員2名と他1名のオリジナルメンバーではないが久しぶりの大きい記録なのでペンをとりました。それでは5月に行った九州宮崎県大崩山系・小積ダキ上部開拓の話に入ります。

4月30日前夜京都を発ち、瀬戸大橋を渡り午前5時頃には九州上陸。とんでもないギアと食料、ザイル、ボッシュ、ビデオ、をかつぎあげ夕方にベースキャンプに着く。

5月1日6:30起床10:00に小積の頭からラッペルを始め、手際よくボッシュで支点をうめていく。だんだん雨、風が強くなるがしぶとくねばって全ピッチの支点と一部ランニングをうめる。4:30B.C着

5月2日雨…。

5月3日4:30起床7:00から1P目クリーニング、ランニングボルトうめ、試登を行い13:00いよいよ明川リードでスタートする。悪いアンダークリングから、ガバフレークを利用してハングをぬけ、ダイクを左上し3ポイントのA1を越え、核心のあまいクラックに入る。足でクラックを押さえバランスをとり、一気にぬける。後はマントリング、ポケットを使ったスラブフェースを登り1ピッチ目終了。2P目永井久雄氏リード。いきなりポケットにフレンズ、ナイフブレードのタイオフ、ラープ、ナッツ、リベットと総動員。フレアーしたクラックではカムがうまく効かず苦労する。墜落4回、2時間30分のリード。ビレーも疲れたけど、アメリカンエイドって恐いものかもしれない。  18:00、3P目試登なしで明川リード。岩の波、ポケット、結晶ダイクをうまく読み必要最小限のボルトのピッチです。ちょっとランナウトが恐いかもしれないが、満足している1Pです。19:40、B.C着。

5月4日最終日ユマーリングで4P目のまぶたハング下のテラスまで行く。4P目はこれぞアメリカンエイドという、フレンズ、ナイフブレードばっちりのトラバースルート。しかしその前後の内容はエイドの恐さ一杯で全6ピッチ中最高の出来となりました。最後のスカイフックトラバースはアメリカンエイドならではの無茶恐わ~フィナーレ。5P目は京都エクスプレスに合流。最終ピッチ快適なスラブで小積ダキのピーク、 360度の大パノラマ。B.Cを撤収しその日に無事下山。

今回の九州で3本目のオリジナルルート開拓となる。同人蜘蛛の糸の永井久雄氏のパイオニアワークと我が会ホープヤングパワーの唐橋芳和君、そして私のフリークライミングと三者三様それぞれの力を十二分に発揮し出来上がったルートということで“呉越同舟”とつけました。またフレンチスタイル、アメリカンスタイルのミックスという意味も含まれます。

これらのアメリカンエイド、フリークライミングを会の活動に取り入れ、どんどん活性化していきたく思います。これにより今あるいろいろな岩壁の見方が少しずつ変わってくると思います。必ずときめきがそこにはあると思うのですが。みんなの意識改革にもなると思います。サッカーのJリーグの様にプロ意識が芽生え選手ひとりひとりの気持ちが変わってきているのを感じます。社会人山岳会だからという枠をみんなでどんどん押し広げ間口、活動範囲を広げ新しい展開を試みましょう。

楽しい仲間がどんどん増えていく会にみんなで頑張りましょう。今年は何か起こるかな?

使用ギア   ザイル10.5x50m 3本<   カラビナ 60枚   フレンズ 2セット   キャメロット 1セット   トリプル 2セット   ナッツ 1セット   ナイフブレード 10枚   ロストアロー 3枚   アングル 5枚   ラープ 4枚   アルミリベット 2本   スカイフック 5回使用   ステンレスアンカー 8mm   ビレイ用 12本   ランニング用 19本   ボッシュ 1台

1P目 5.11b A1 35m 悪いアンダーフレークからダイクを左上。3ポイントのA1からフレアーしたクラックをバランス、レイバック、浅いジャムを使用し抜け出し、ポケット、マントル、スラブ等、内容のある1P目。

2P目 5.8 AA2 25m 風化した、浅いフレアクラック。ネイリング、ナッツ、フレンズ等カム類のセットが悪い。

3P目 5.10c 20m ボルト3本、フレンズ#1、#3.5の少々プロテクションの悪いスラブ。必要最小限のボルトによる開拓と私自身自負している1Pです。

4P目 5.8 AA2 20m 悪いネイリングからこれぞアメリカンエイドというピッチ。最後は恐ろしいスカイフックのかけかえ。

5P目 5.8 AA1 20m 少々、フレアーぎみのきれいなコーナークラック。カム類のセットが難しい。フリー化は不可能か?

6P目 5.9 45m フイナーレにふさわしい最終ピッチ。