記:小久保 清美

日  時:平成12年11月12日(土)~13日(日)
メンバー:CL中西正大・大住宏明・寺澤知子・井川裕美子
岡本誠・岸本康之・川合弘子・小久保清美

少し早めの紅葉と豊かな滝を楽しみに、上記の8名で秋の大杉谷へ出かけました。このところ週末になれば雨になることが多く、雨男の中西リーダーを筆頭に雨の多い大台ケ原に行くため、かなりみんな雨降りを覚悟していたのですが、結局2日間ともまずまずのお天気が続き、ほどよい陽気に恵まれました。入会ホヤホヤの川合さんも参加、みんなでワイワイ楽しい山行となりました。

大杉谷は奈良県から登りはバスで山頂まで行き下山するというのが一般的だそうですが、今回私達はその逆、三重県側から入山して山頂まで登り、下山にバスを使うというルートを選びました。私が下山時に膝を痛めやすく、しばらく山に行くのを怖がっていたために中西さんが提案して下さったルートで、そこに皆さんも加わってくれて大勢での山行となったという次第です。中西さん、お世話かけて、ありがとうございました。

■11月12日(土)

今回は京都組と大阪組に分かれて出発し、近鉄線の松阪駅で待ち合わせ、そこから9時発のバスで大杉まで行く予定でした。ただし、京都からの始発特急が7時15分発、松阪到着が8時59分にもかかわらず、9時発のバスに乗るという強行スケジュール。そんなに大きな駅ではなかったので降りたとたんに京都組の4人で走ったのですが、バスは無情にも出発してしまった様子。しかたなくタクシーでバスの後を追いかけることとなりました。また不運なことにその運転手さんがのんびりしていて、事情を説明して急いで追いかけてとお願いしているにもかかわらずマイペースなものだから、私達はイライラ、メーターがどんどん上がっていくのをヒヤヒヤしながら見つめるばかり。ようやくバスを前方に確認することができたので、信号待ちのところに中西さんが走っていって次のバス停で停まってもらうようにお願いし、合流することができました。逆ルートだから空いているだろうと思っていたらなんのその、車内は満員、登山者がいっぱいでちょっと驚き。そしてバスは11時過ぎに終点の大杉に到着、次はそこから船に乗って登山口の近くまで行き、ようやく山行開始となりました。

初めて顔を合わすメンバーもあり、軽く挨拶を交わして1時に出発、今夜の宿泊先の桃ノ木山の家まではおよそ4時間30分の予定です。歩き始めからすぐに渓谷の雄大な景色が目の前に広がり、深い山の中に足を踏み入れてゆきました。途中約9.5kmの間に11もの美しい吊り橋が続くのですが、長いものでは89mもあるとか。吊橋を渡るスリルと岩場の絶景を楽しみながら、およそ30分で一つ目の滝「千尋滝」へ。高さは約160mあるそうで、天から真っ白な水しぶきが降り注いでいるようでした。ほどなく次の見どころ猪ケ淵へ。深いエメラルドグリーンに輝く川には岩魚もたくさん生息しているらしく、高い所から見ていても川底まで透き通って見えそうなほどに水がきれいでした。少し行くと今度はニコニコ滝が見えてきます。さすがに雨の多い大台ケ原だけあって、豊富な水量が独特の渓谷美を創りあげており、100m超の絶壁はかなり見ごたえもあります。ただ、岩場やくさり場が続き、水や落ち葉で滑りやすい足場のせいか、昨年1年間でも8人もの人が転落して亡くなられたとのこと、少しの油断でも大事故につながることもあり、みんな楽しみながらも緊張感を忘れずに歩き続けました。そして、初日の行程もあと僅かとなってきたところ、突然私の右足がつってしまい、ここでみなさんに大変ご迷惑をおかけしてしまいました。少し高さのある岩を勢いよく一気に登ろうとしたところ、あっと思ったその瞬間、痛さで全く動けなくなってしまったのです。後ろにいた大住さんにすぐ適切な処置をしていただき、岸本さんとともに私のサポートのために後からゆっくり歩いていただくことになり、二手に分かれて小屋まで向かうことになりました。大住さんのマッサージとテーピングのお陰で、私はその後無事に山小屋まで行き着くことができました。足がつるとあんなに痛いものなのだということを実感、日頃の不摂生がたたったのでしょうか。情けない限りです。

桃ノ木山の家は深い渓谷にあるにもかかわらず、とても立派な佇まいでした。私達は時間的に利用できませんでしたが、なんとお風呂まで完備されているとか、水の多い地形ならではですね。私達は5時前に着きお腹もすいていたので、即刻夕食に取り掛かりました。基本的に一泊二食付なせいか自炊するひとは外でやってくれと言われて、少し離れた真っ暗な川原へヘッドライトを頼りに降りていき、そこで豪勢なスキヤキディナーパーティを始めました。夕食は寺澤さんと井川さんが材料を準備してくれて、家で食べるすき焼きよりも中味の豊富な、とってもおいしいものでした。座ったポジションもあったのですが、ちょうどお鍋の近くにいた岡本さんが味付けを担当、いつも作るんですか?って冷やかされながら作ってくださいました。缶詰のフルーツなどデザートもあって、お腹一杯になったところで山小屋へ。引き続き飲みなおそうしたのですが、他のお客さん達はもうほとんど寝てらっしゃる様子。ちょうど屋根裏部屋のようなところがあり、そこには誰もいなかったので、お酒とおつまみをこっそり持ち込んで二次会の始まり。9時30分の消灯まで和気あいあいと楽しいお話が続きました。

■11月13日(日)

翌朝は5時30分に起床、再び昨晩の川原で朝食を済ませて7時20分に小屋を出発しました。調べたところでは今日のルートの方が急坂もあるとのことで、みんな気持ちを引き締めて歩き始めました。

昨日に引き続き今日も至るところで素晴らしい滝の眺めを楽しむことができました。日本の滝100選にも選ばれている「七つ釜の滝」は、約50mもの高さから水が勢いよく流れ落ちていきます。大杉谷も終わりにさしかかる頃、最後の大きな滝「堂倉滝」がありました。滝からほとばしる水はマイナスイオンを発していると聞いたことがありますが、滝壷に豪快に落ちていく様を見ていると、しばし疲れも忘れてしまいます。夏だったら思いっきり水に飛び込んでみたいねってみんなで話していました。その後も深い谷のオアシスとも言えるような美しい沢沿いの道や、切り立った絶壁をヒヤヒヤしながら進みました。粟谷小屋で軽く休憩して、あとは奈良県との県境にあたる日出ケ岳まで最後の登りとなります。大台ケ原へのルートは少しずつ紅葉が進んでいるといった様子で、所々で赤や黄色に色づいたモミジやカエデを見ることができました。途中、シャクナゲ坂と名づけられたところもあり、暖かくなり始めた頃に来ればまた違った景色が楽しめるものでしょう。

そして1時30分、大台ケ原の主峰、1695mの日出ケ岳に着きました。ここへは近くまで車で来る人も多く、整備された山頂公園といったところ。この日は少し曇っていたのですが、お天気がいい時は尾鷲湾から熊野灘方面へ海も眺められるそうです。

日出ケ岳から大台ケ原駐車場まで歩き、そこからバスで近鉄線の上市駅へ向かいました。きれいな所を走っていったようでしたが、さすがにみんなすぐにおやすみモードに入りましたね。最後は近鉄電車に乗って京都・大阪方面へ、無事山行は終了しました。みなさん、お疲れさまでした。

転落事故も多いところだけに緊張感を伴った山行ではありましたが、とにかく壮大な絶壁と緑の中に点在する滝の神聖ともいえる風景に心も洗われる思いがしました。豊富な経験で私達を指導して下さる中西さん、誰からも慕われるお世話役の大住さん、にこにこしながらもルート確認を怠らないしっかり者の岡本さん、明るいジョークでみんなを楽しませてくれる寺澤さん、いつもかわいい笑顔を忘れない井川さん、一杯食べて一杯笑うとっても元気な岸本さん、優しさの中に芯の強さを秘めた川合さん。今回も楽しい山の旅、素敵な思い出になりましたね、ありがとうございました。