2007/9  T嶋T

行動記録:

  9/22 称名川第2発電所(7:15)‐ザクロ谷F1(10:00)‐F4上(13:00)‐手まり滝少し手前(16:20着、ビバーグ)

  9/23 出発(6:00)‐F25上 (12:00)‐大日平への分岐(17:30遡行終了、ビバーグ)

  9/24 出発(7:30)‐称名の滝 (9:00下山)

 メンバー:

Y(大阪わらじ)、S、T(関西岩峰会)



ゴルジュ前夜

 昨年頃からYさんに聞いていた国内有数のゴルジュ突破ルート。8月の岩井俣沢の後すぐに9月の2つの3連休のどちらかで狙いたいと誘いがあった。ホームページなどで情報収集するが、登攀意欲を誘わせる記事や写真に内心燃えてくる。9/14の週末は天気予報が悪すぎ延期になったが、この週末は事前の雨もなく絶好のチャンスだ。

ゴルジュとの格闘(9/22)

 前日、称名の滝へのゲート前に3:30頃到着。ゲートが6時に開くと思っていたため、5:30起床で準備するが、時間になっても開かない。Yさんが案内標示を確認に行くと9月からは7時開門らしい。ゲートが開くのを待って称名川第2発電所近くの路肩に駐車し、いよいよ出発。

 導水管の脇の急な階段を登り、真っ暗なトンネルをヘドラン点けて歩いていくと雑穀谷に出る。このアプローチだけでも異色の沢の感がある。雑穀谷は荒れたところもあるが、水はきれいだ。心配した水温だが、自分が思っていたほど冷たくもなく上下半袖のウェットスーツ+カッパでも何とかなりそうだ。Yさんは、この水温でも長く浸かると結構寒いと予想し完全武装だ。Sさんは薄手の長袖のウェットも着込む。(結論から行くと下は長いウェットが正解か)


F2とF3

 しばらく歩くと雑穀谷は左に折れ、正面に幅1-3mの流域に両岸が40-50mの切り立った緑の壁が見えた。この鬱蒼としたゴルジュがザクロ谷の入り口である。入ってすぐ目の前にF2,F3の激流が見える。これまでだったら巻くしかないと思うところだが、この谷は巻くところがない。リーダーのYさんがハンマー投げで引っ掛け登ろうとしたが、滝から落ちる水が圧倒的でユマールを使っても上に進めない。そこで滝の右側のリスにハーケンを3本打ち、A1で突破を試みる。Sさんもサポートに行きショルダーをする。途中から滝に正対しステミングで抜ける。その上のS字の激流もステミングで越えたところで、ビレイ点としたようだ。荷揚げも考慮するとこのポイントしかないと判断したようでこのあたりはさすがYさんである。Sさんがセカンドで続き、荷揚げ後自分がフォローする。F2上のステミングは上がりすぎて足の開きの限界点に達しそうだったが、Yさんのアドバイスで少し下のポイントで抜ける。足がすべれば激流に巻き込まれ、ビレイヤーから見えなければそのまま大変なことになりそうだ。

 次のF3へは自分がリードする。水流脇を越えていくと、フリーでは登れそうにない岩があった。リングボルトが見えるが、これだけで越えるのは大変そうだ。持っていたバイルに長いシュリンゲをかけ岩の左側のチョックストーンめがけて投げる。普通にオーバーハンドで投げたが思ったより飛ばず、自分の頭のほうにバイルが落ちてきた。避けられず頭に当たったのだが、後で見ると額から少し血が出ていた。距離が出てなくて助かったー。3回目くらいで引っかかり、末端にあぶみをかけ、リングボルトのあぶみも使って、よじ登る。バイルがどれくらい引っかかっているかわからないので、登る前に何度も引っ張って、テンションをかけたままあまり引く向きが変わらないように注意しながら登った。二人も続いて登ってくる。

 さて、次はF4だ。朝は雲ひとつない快晴だったのにこの頃から雨がポツポツ来るし、緑の回廊の真っ只中なので精神的プレッシャーも大きくなっていたのだが、ここでYさんが釣りをすると言い出した。決して速いペースで行ってるわけではないので心配だったが、ここには黄金の岩魚がいるらしいので釣り好きには見過ごせないのだろう。ザクロ谷の入り口付近で魚影はあったがここでは釣れなかった。F4突破に向けては、まず泳ぎの得意なSさんがライフジャケットを着て手前の淵を泳いで行くが、滝まであと1mというところで押し戻される。次にYさんが突っ込むがやはりだめだ。(ちなみに泳ぎが今一の自分は時間の無駄なのでチャレンジせず。)ここでYさんが左岸のクレハコーチルート(リングボルトの残置)を使って滝に近いテラスに上がってハンマー投げを試みる作戦に変更。ここからYさんの奮闘が始まる。最初のリングボルトにあぶみをかけたいのだが、足の着かない水中からあぶみをかけなければならない。釣り竿を改良して作ったチョンボ棒を駆使して苦闘の上ピンにかけ、なんとかテラスまで行く。さらにここから10mくらい先の滝上のCSめがけて投げるが最初はうまくいかない。投げ方を変えつつ、だんだんいいところに行くようになる。必要な長さのロープを右手で束ねて持ち、ハンマーの長いシュリンゲ1mくらいのところを左手で持ち、ぐるぐる回して遠心力をつけ、タイミングよく下から上に投げる。Yさん曰く、少しづつ方向を変え、最初はCSの右を狙ったが引っかからないので後半は左を狙ったとのこと。数えてないが、30回目くらいで見事引っかかった。テラスから引いても大丈夫そうだ。ハンマーが抜けて再度投げないといけないかもしれないので、Yさんにはそのままいてもらい、自分がユマールを使って上ることにする。ロープを頼れば難なく水流も突破でき、滝上に上がる。F4だけで、2時間は費やしたのではないだろうか、全く強敵である。


ハンマーを投げたYさんとF4を登るT



セカンドのSさん


 その後も困難な滝が続くのだがF2からF4があまりに強烈だったので、精神的には落ち着いてこなしていく。リードも3人で回し、リスクを分散して進んでいく。

 平流もちらほら出てきたところで、予定の早乙女沢出合のだいぶ手前だが、予備日もあるので、1日目の遡行を終える。Yさんには岩魚を釣りに行ってもらい、Sさんとツェルトを張り、薪を集める。結局岩魚は釣れず、残念。焚き火を始めたところで雨が降り始めたが、1時間ほどで止んだので再度焚き火で財布などを乾かす。今回岩井俣の反省できっちり防水対策をしたつもりだったが、再三の荷揚げのせいでかなり濡らしてしまった。Yさんと自分は携帯をやられてしまった。



ゴルジュこれでもか!(9/23)

 2日目、6時に出発。手まり滝を左から巻き、早乙女沢出合に出る。昨日泊まったところに比べるとあまりいいテン場ではなかったので結果オーライ。その後、0.5mの口なしの釜でトポでは苦労したようだが、ここはYさんが13クライマーのヒールフックで難なく超える。




 小さい滝をこなしていくと、4段30mのF25が見える。ここは左の苔じゅうたんのスラブを登るいやらしいところだが、なぜかここは自分がリードすることに最初から決まっていた。出だしは小川山の10a位のスラブ(苔のせいでグレードが上がって10b?)を微妙なバランスで抜ける。残置のリングボルトまで5mは慎重に登る。リングボルトの手前1mくらいに曲がってヌンチャクもかけれないハーケンがあったので、フイフイをひっかけ立ち上がってやっと1ピン目にクリップ。その後も草付きののっこしがあったりしたが、なんとか抜ける。後はバンドをトラバースして、最後は懸垂でF25を超えた。



 その後、1mくらいで中央突破は難しそうな滝(F27)をSさんがリードしたが、右岸をへつっていったと思うと、最後滝の上に飛ぼうとしている。こっちから見ると距離が2mくらいあり、着地点には刺さりそうな流木もあったのでまさかと思ったが、あっさり飛んだ。セカンドを自分がユマールで行こうとしたが、滝下はハングして流水が強くとても登れない。CSにシュリンゲをかけて、あぶみを垂らしてもらいなんとか越えた。

 F31とその前後の滝は残置を使いつつ微妙なトラバースで冷や汗をかく。そしてF34。右岸のボルトラダーを人工で越えるのだが水中からの1ピン目が3mくらい上にある。自分が水中でショルダーし、Yさんが前述のチョンボ棒を使ってかける。(水の冷たさと重さでもう少しでくじけそうだった。)1日目に負けず劣らずのハードな登攀が続く。



F40のハンマー投げ後の登り

 F37はもろい岩場をSさんが慎重に抜ける。そしてとうとう最後のF40である。最初左から巻けそうだったので、いやらしい場所担当の自分が行きかけるが、途中ピンも取れずいいホールドもなくなったので躊躇しているとYさんがハンマー投げの選択肢もあるといってくれたのであっさりそうする。2回ほど自分が投げて見たが、飛距離は出るがコントロールは難しい。そこで昨日さんざんのハンマー投げで技を体得したYさんに代わってもらい、10回ほどの投てきの後見事ひっかけた。自分が最初にユマールで登り、なんとか最後の滝も明るいうちに終わらせることができた。


 F40の後すぐに大日平への分岐に到着した。この日のうちに降りることもできたが、予備日もあるし雨も降りそうにないのでここで泊まることにした。昨日もってきた酒を飲んでしまったのでSさんの梅酒を一口もらい、夜遅くまで焚き火でくつろいだ。

さらばゴルジュ(9/24)

 3日目は降りるだけだったのでゆっくり7:30頃出発、大日平までは濡れた道だったので沢靴だけ履いていったが5分くらいで湿原の木道に出たので靴に履き替える。後は不動滝で記念撮影したりして、称名の滝の方に降りた。帰りは亀谷温泉に寄り富山でキトキト寿司を食べ、帰途に着いた。
ゴルジュ考察


Yさん、Sさんとは去年のイブキグラでもパーティーを組んだが、お互いの得手不得手もわかっており、ベストパフォーマンスを出せた気がする。本当に身も心も充実した山行であった。

帰る道すがら、ここより難しいところはとYさんに尋ねると海谷/不動川というのがあるらしい。ただ現時点ではターゲットには入ってないという事で内心ほっと一息。



(おまけ)称名の滝