「黒部の水は、水の重さが違う」「水の密度が違う」と、
噂に聞いてましたが、本当でした。

水が、さらさらと流れてくるのではなく、ドーンと丸い塊になって
体当たりしてくるのです。

普通の沢は、水の中に一歩足を踏み入れると、
水はその足の左右をすり抜けるように分かれて流れていくのだけど、
黒部の沢は、その中に足を突っ込んで割り入ろうとしても、
水はなかなかそれを許してはくれず、私を弾き飛ばそうとするのです。
単純に水に勢いがあるというだけではないような、なんだか、水が、
意志を持った生き物のように感じられるような。
そんなふうに感じました。

今回の山行では、身をもって、そんな「黒部の水」に触れることが
できたのが、一番の印象的な体験です。





東沢出合。
今年の夏はいつもより水量が多いらしい。
スクラム渡渉、へつり、高巻きを繰り返し、出だしの激流を越えていく。
その場の状況と自分の力に合わせて、無限の選択肢の中から、悩みながら、
ルートを考えるのも沢の楽しさです。
(私はまだまだ先の先が読めず、行き詰って戻ったりが多いのですが・・・。)





出だしのゴルジュ部分を越えると、沢の流れはだいぶ穏やかになり、ほっと一息。
これで一安心だ。ふと後ろを振り返ると見えるあの山はどこだろう?






明るく広い沢の行く手には、残雪をまとったアルプスの稜線が
見え初め、もう、楽しさ満開。





そして、沢の夜は、お約束の焚火。





枝沢をひとつずつ分けるにつれて、川幅はだんだん細くなる。
最後は雪渓になり、雪渓の脇では、ハクサンイチゲやキンポウゲやチングルマ
といったお馴染の夏のお花たちが私達を出迎えてくれた。
最後の最後は少しハイマツを漕いで、東沢乗越で登山道と合流した。
振り返ると、まっすぐ北に向かう大きな大きな谷。そのいちばん奥には、
私達が2日前に出発した黒部ダムも小さく見えている。
ずっとこれを登ってきたのだ。感慨深い~。




真砂岳から竹村新道を湯俣に下山。
初めての湯俣でしたが、湯俣、もぅ最高でした!
テント場には私達の1張りだけで、テントのすぐ横には川原に手堀りの温泉が。
小屋の皆さんが寝静まった真っ暗な中、出たり入ったり涼んだり。
大自然と一体になったのを感じながら、とってもいいお湯でした。
今度は、温泉に入るだけの目的でのんびり訪れたりしてもいいなぁ~
と思いました。

<とん>