ルート:槍ヶ岳 北鎌尾根

メンバー:手嶋(L)、中西、首藤(智)、岩田、山川

行動記録:

4/30  高瀬ダム(7:00)‐湯俣(9:45)‐千天出合(15:00)‐P2取付(15:50、テント泊)

5/1  P2取付(6:00)‐P2(8:00)‐P5(11:30)‐北鎌コル(13:45) ‐P9(15:30、テント泊)

5/2  P9(6:30)‐P10独標(9:00)‐北鎌平(14:00)‐山頂(15:30)‐槍肩(16:50、テント泊)

5/3  槍の肩(6:00)‐横尾(10:00)‐上高地(14:00)

プロローグ
大学時代から岩峰に入るまで一人で山に行くことが多く、植村直己や加藤文太郎に憧れていた。「孤高の人」に出てくる北鎌は登山家の最終到達点のようにも感じていた。3年前に誘われた時は海外出張で行けず、北鎌へ行きたいという思いは強まっていた。登りたい山は思いが強いときに行くべきである。また、自分で計画し、やり遂げないと本当に登った気にならないと考えるようになった。今年の冬はコンスタントに権現東稜、八ヶ岳、鋸岳といったバリエーションにも行き、北鎌も3月頃から一緒に行く人を探していた。なかなかメンバーが見つからない中、同様に北鎌を考えていた中西さんからMLに募集のメールがあり一緒に行くことになった。メンバーも増え、自分からリーダーを引き受け、念願の「北鎌」が実現した。
渡渉が核心?

4/29の夕方、京都駅に集合。GW初日ということで渋滞を心配していたが意外に空いており、23時頃には大町手前の道の駅でテントを張ることができた。4/30朝、予約していたタクシー会社に車を預かってもらい高瀬ダムまでジャンボタクシーで送ってもらった。   北鎌は湯俣からP2取付までのアプローチが核心とも聞いており、行く前からかなり警戒していた。対策として山川さんは沢靴、岩田さんはゴム足袋、ゲフさんはワラジを持参。3年前は千天出合の近くでの1回だけでよかったと聞いていたのだが、序盤のへつりの途中で固定ワイヤが切れており、いきなり渡渉することに。最初という事でロープにスクラムと万全の体制で望む。まず自分と岩田さんが行くが川に足を入れた途端、足が痺れあがるほどの冷たさで必死に対岸まで行く。渡ってしばらくは足がジンジンして辛い。続く3人はバランスを崩し山川さんは上半身まで浸かってしまう。天気が良くすぐに温まれるので救われる。結局、倒木の橋渡りを入れると計6回の渡渉があった。

急登と悪い雪


5/1は、朝からいきなりの急な登りで昨日から抜きつ抜かれつの二人組と今日も同じようなペースで登って行く。稜線に出ると陽射しも強く「暑い、暑い」と言いながら、ピークを越えていく。雪はザクザクで体重をかけると抜けるような状況であったことから、P5、P6のトラバースではロープを出した。北鎌コルへの下りでは、後ろ向きに下りていたゲフさんに「ここは前向きでいいでしょ。」と言ってしまったばかりに雪が抜けて滑落しかけたが、ピッケル一発で止まる。反省。



この後予報どおり天気が崩れ始め、雪が舞っていたかと思うとそのうち小雨が降ってきた。ゲフさんも共同装備の重さのせいかペースが上がらない。P9を越えてコル辺りまでは行きたいところだったが、明日の天気の回復を期待してP9の頭にテントを張った。天気予報を聞き、翌日早いうちには寒冷前線が抜けるだろうと都合の良い解釈をして食事に入った。強い風と雨音の中、ゲフさん特製の牛丼をおいしくいただく。(影の食担の綿密なメモをもとに愚痴を垂れながら作ってもらったのだが)。1日目の岩田さん特製のうなぎチラシ&卯の花といい、豪勢であった。

雲から現れた槍
5/2の朝方には風雨もやみ、霧の中を出発。独標(P10)への登りも悪いところがあり、ロープを出す。このロープを出した後もあまりよくない所があったのだが、前の3人がそのまま行ってしまったので自分もロープを岩田さんにまかせてそのまま先行を追いかけていた。しばらくすると後ろから救出要請が来た。岩田さんには久々のアルパインだったこともあり一歩が踏み出せなかったらしい。後ろへの気遣いがなかったのは反省点である。

今回のメンバーは日頃の山への取り組み方が違うこともあり、恐さの感じ方や技術、体力にばらつきが見られた。日程的に余裕を持っていたことが幸いしたが、北鎌のような長く、さまざまな岩や雪のミックスされたルートではメンバーの力の正確な把握とパーティーとしていかに全体スピードを上げるかという戦略が必要と感じた。

独標を過ぎた頃から雲が晴れ始め、槍がその姿を現した。今回還暦にして5回目の北鎌という中西さんも写真を撮りまくり、P12では年賀状用の写真も撮影しご満悦であった。当初天気が悪ければ北鎌平泊も考えていたが完全に天気も回復したことから、P14で今日中にピークに行くことを決めた。見渡す限り雪を頂いた山々という最高のロケーションの中、登るにつれ堂々としていく槍ヶ岳に向かっていく。

4人のメンバーの後ろを歩いていたがふと足をとめ、これがずっと憧れていた北鎌だと思うと胸にジンと来るものがあった。最後の頂上へ突き上げるピッチのリードをやらしてもらう。歓喜の雰囲気の漂う空間へ身を置いた後、フォローのビレイに入った。

家に帰るまでが山。。。

5/3の最終日は下るだけだったが、湿ったプラブーのせいでゲフさんや自分は足にダメージを受けてしまった。車を大町から沢渡まで回すため、横尾で自分だけ先に上高地に向かった。松本から大町に行くのに何の疑問も抱かず長野行きに乗ってしまうというポカもあり、沢渡に着いたのは19時になってしまった。渋滞の松本方面を避け、高山周りで帰ったが山科駅に着いたのは最終電車直前であった。

今回の山行は自分の中で強く行きたかった山だったこともあり、変にリーダーという意識が強くなりメンバーには随所で厳しいことを言ってしまったが、いい雰囲気で念願の「北鎌」に行くことができた。また今回のような緊張感のある登山がしたい。そう感じさせてくれる山行であった。