残雪の北山の、とある尾根を歩いてきました。





なんと。行ってみると、取り付こうと思っていた尾根の先端には、日当たりのよい斜面に
いくつものお墓が立ち並んでいた。いかにも田舎らしい、よい風景。
さすがにそこは遠慮して、500メートルほど尾根裾の道路を進み、そこから少々強引に
適当な斜面を尾根に上がらせてもらう。
かなりの確率で、グサグサの雪にズボっと足がはまってしまうが、うららかな天気も
手伝ってか、あんまり腹は立たない。春だなぁ~と思う。

尾根の上は快適。何年か前にこの近くに来た時の印象と同じく、たくさんの種類の
自然木が、私たちが縫って歩く隙間をじゅうぶんにあけて、ちょうどいい感じで生えている。
何故かこのあたりの木はみんな線が細くて綺麗なのも、好きなところだ。

当たり前のことだけれども地形図どおりの風景が広がっているのを、いちいち確認
しながら歩くのがとても楽しい。「等高線」という、あんな細っちい単純なもので、
この世のこの複雑な地形をすべて表すことができるのだから、ほんとうにすごいと思う。

そして、紙の上に表された無色の地形の上に、どんな植物がどんなふうに
枝を伸ばしているのか、どんな動物が住んでいるのか、実際に目で見ながら歩き、
さらにもりもりと想像を膨らませながら歩くのが、ほんとうに楽しい。
目移りするほど次々と見るものが現れて忙しい夏と違って、目に止まるものが少ない分、
雪の上に落ちているひとつのピースから、静かに無限に妄想が膨らんでいく。




いくつかのピークを越えて、本日の幕営候補地へ。
ピーク横の、くぼ地のような小さな雪原。じゅうぶんに安全も確保できるので、地面さえ
掘り出せば、Y君が焚火をたいてくれるという。スコップで掘ってみると、予想以上に
雪は深かったが、諦めかけたころ、細い細ーい穴の底1m20センチくらいのところに、
黒く小さな地面が見えた。カヨコと2人、必死で穴を広げ、たたみ一畳ほどの地面を
掘り出した。本気になった私たちを確認すると、Y君もしかたなく(?)薪集めに
出かけていった。まさか雪山で焚火をするとは思ってなかった。楽しい一夜だった。






翌日は念願の国境縦走だったが、前日の歩きと穴掘りのおかげですっかり筋肉痛。
そんなこんなで、誰からともなく、予定より手前の支尾根から下山するという案が浮上。
目の前のラクチンに思わず目が眩んでしまったが、けっこう難儀な下りだったのに加え、
最後のミニ徒渉でずっこけるというオチまでついて、結局どっちが楽だったのやら・・・?!

雪が消えるのも、もうすぐのようでした。そろそろ山菜が楽しみなシーズンです。

写真:カヨコ 文:とん