清水研吾 草間麻子

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(3月12日より) 3日目
日の出まで仮眠。日が昇ると他のメンバー殆どが下山していく。
草間氏も体調不良のため下山。僕と数人が再アタックのためHCに残る。
軽く朝食を取る。
昼過ぎに明日山頂アタックする人達が登ってくる。
日本人が僕の他に2人登ってきて、そのうちの1人とザイルパートナーになる。
すでに頭が痛いと言っている。食欲もないらしい。
ダイアモックスを2錠渡す。
夕食の時間、パートナーはトイレで吐いてきたらしい。1錠飲んだが回復しないようだ。
僕はHC5200mに2日間いるので、すこぶる体調がいい。
夕食後就寝。夜中、隣でパートナーがうずくまり2錠目を飲んでいた。

4日目
午前0時起床。遠くで雷鳴が聞こえる。
朝食後、しばらく様子をみることに。
パートナーは起きてこない。
午前2時、天候が回復。アタック開始。
パートナーは回復せず棄権。HCに残る。
昨日の悪天候を感じさせない好天。無風。どんどん登る。
僕とガイドのペアがトップでひたすら登っていく。アイゼンがサクサク刺さり非常に歩きやすい。
体調も万全。
何度か軽く休憩を入れた後、稜線に出るための氷壁までくる。
最大斜度約80°、高低差20m。
ザクザクなのでピッケルのみで登る。アイゼンがよく刺さる。ランナーは取らない。
すぐに息が上がる。高所での登攀が想像以上に苦しい。
呼吸しても酸素が供給されている気がしない。肺が破裂しそうだ。
ヘッデンの明かりに雪の粉がキラキラ光る。
稜線に出る。小休止。
呼吸を整える。回復しない。どれだけ息をしても、もう楽にならない。
栄養ゼリーを食べ稜線を歩き出す。風は無い。
寒い。
日の出前なので一番気温が低いのだろう。
下調べでは、最低気温はー20℃前後。
正月に凍傷になった指が痛い。左手も痛い。何度もピッケルを左右に持ち換える。
つま先も痛い。
右手をずっと太ももに叩きつける。指の感覚はある。大丈夫そうだ。
60°程の斜面を延々とトラバースしながら登る。
下方を向いても、光が届かず終わりが見えない。
バランスを崩すとどこまでも滑落していきそうだ。
息は上がりっぱなしで、荒い呼吸が続いている。
前日に雪が降ったが、踝の少し上くらいまでしか潜らない。
昼間に溶け、また凍りつくので雪面が硬くなったのだろうか。とりあえずありがたい

登り続ける。
再び稜線に出る。痩せた稜線の先が途切れる。
山頂に着いたらしい。
実感はない。周りは暗く、またガスで景色もない。
写真を撮る。低温対応のデジカメだがフラッシュが光らず何も写らない。
少し休憩し下山開始。
下山は早い。徐々に太陽が上がり視界が開ける。
すごい。景色がでかい。
日本の山と何が違うのか分からないが、なんというか景色がでかい。雄大だ。
やっと登りきったという実感が沸く。
途中何度か写真を撮る。
所々クレバスが開いている。底が見えない。
80°の斜度をクライムダウン。取り付きのすぐ横にクレバスが開いている。
そこに滑り落ちたらと思うとぞっとする。
結局一度もビレイする事はなかった。
日が昇るにつれ暑くなる。
HCに到着。午前8時くらい。
途中でリタイヤした人、高度障害で山頂アタックできなかった人がたくさんいる。
登頂率は50パーセントらしい。
今朝アタックできなかったパートナーに迎え入れられる。
もう一度朝食を取り下山準備。
昼前に荷物をまとめ、BCまで下山。これが一番きつかった。
BCから宿近くまで車で送ってもらう。
車中、一緒に山頂に立ったイタリア人が、やたらと気を使って食べ物をくれる。
何言ってるか分からないけどいい奴だ。
宿の近くで降ろされ、そこから歩いて宿に向かう。
疲労と頭痛と満足感でいっぱいだ。
ボリビアはいい所だ。

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(終わり)

<以上、原文ママ> 代理投稿 M