誰しも、気になりつつも登る機会に恵まれない山があるでしょう。私にとって大峰・山上ヶ岳はそんな山のひとつでした。週末は湖北の山に行くつもりでしたが、寒波襲来の予報。風雪の中、ワカンラッセルでもがくのも億劫になり、急遽大峰に行くことにしました。

土曜の夕方、洞川に着いたときに雪は全く無かったけれど、朝起きると南岸低気圧の通過であたり一面は銀世界、新雪が10Cm 程積もっていました。登山にはラッキーなのですが、車がノーマルタイヤなので弱った。雪道に慣れていないし、この20年チェーンなんか巻いたことも無いから帰れるかどうか。

とりあえず日が差す8時まで待って、車でキャンプ場から登山口へ行くと、ごろごろ水(名水百選)の駐車場まで入れた。山行予定は、山上ヶ岳から稲村ヶ岳を回るつもりでしたが、山上ヶ岳のみにして早めに降りることにしました。

清浄大橋まで雪の林道を歩いていると、雪煙をあげながらスタッドレスの四駆が追い抜いていく。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 清浄大橋を渡ると「女人結界門」が

 その昔、富士山、立山を始め、山岳信仰の霊場はほとんどが女人禁制であったと云う。しかし、江戸後期から明治時代になるとそのような慣習は解かれ、今では「山上ヶ岳」だけが、唯一、女人禁制の山として残っています。

大昔、山岳誌でこの件について対談があったのを覚えています。某登山家が「女性を不浄な存在とみなすなど、時代錯誤でけしからん・・・」と憤慨していたのに対し、(結構な年齢の)某女性登山家は「女人禁制、ふーん・・・」と、鼻であしらっていたような。

その頃、クライミングに燃えていた私は、この手の山岳業界人の対談なんか、あんまり関心もなかったけれど、昨年から山に復活して登っていると、いろんなことを思い出し、時の流れを感じてしまいます。

結界を越えて、良く整備された登山道(参道)に入り静寂の中を黙々と登る。新雪が20cmぐらい積もっていて所々氷っていた。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 入山者のための茶屋も冬は店じまい。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 煩悩を払う修行の場に、何故かワンカップが・・・。

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   「西の覗き」の行場を見下ろす。ばちが当たりそうで登攀欲はわきません。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 大峰山寺の本堂は閉められていた。

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 山上ヶ岳の頂上は広い台地で、夏は極楽浄土のお花畑か?

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「東の覗き」から大峰山脈を望む。この先が裏行場。

 山頂で風が無いのはありがたかったけれど。残念ながらガスっていて、大峰山脈を見渡すことはできませんでした。

さて、女人禁制の由来は、決して女性差別、女性蔑視ではなく、あくまで女性が修行の妨げになるからだそうな。であれば、修行(参拝)を終えた後の「精進落とし」は、この人の世の常。京都でも八坂神社の真ん前は祇園の花街。「それならこっちは洞川温泉で足洗い・・・」なんてアホなことを考えながら下山を急いだ。

ごろごろ水PK  8:30 ~ 清浄大橋 9:00 ~ 桐辻茶屋 10:50 ~ 12:10 山上ヶ岳 12:30 ~ 桐辻茶屋 13:15 ~ ごろごろ水PK 14:50

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    洞川の温泉街は静かなたたずまい。怪しい○ーゾク店はありません。

 <追記>

女人結界を過ぎて、母公堂(役の行者の母上をまつるお堂)まで下山すると、稲村ヶ岳を登った女性登山者達が安産祈願をしていました。同じ修行の山で、山上ヶ岳は女人禁制なのに、「女人大峯」と呼ばれる稲村ヶ岳は、なぜ男子禁制ではないのか? 解せぬ思いをいだくのは私だけでしょうか・・・。(調べると稲村ヶ岳も、もとは女人禁制の山でしたが、戦後女性の地位向上とともに解禁されたそうです。)       ナッキーニャ