まだティーンエイジャーだった〇十年前、オホーツクの『流氷』に北国のロマンを求めて、冬の北海道を一人で旅したことがあります。その頃は登山とは無縁で、旅行好きでもなかったけれど、「遠い世界、未知の世界への憧れ」みたいなものがあったのだろう。後年、山好きになったのは、そんな伏線があったからかも知れない?

 今年7月に、南の屋久島・宮之浦岳を登ったとき、次は北の利尻山と決めていました。事情によって今年は無理と諦めていましたが、9月下旬になって予期せぬお金と暇ができたので、急遽、北海道の山旅に出かけました。

10/2 稚内 ~ 利尻島

 サロベツ原野を突き抜ける道路は、ほぼ直線で信号機も行き交う車もなく、両側に牧場が広がっています。日本離れした風景に、アマゾンやアメリカの道路を車ですっ飛ばしたときのことを思い出しました。海岸線に出ると利尻島が見えて胸が高まる。

1_サロベツ原野サロベツ原野から利尻島を望む。

 稚内からフェリーで利尻島へ。島民らしき乗客は、「今日は波が荒く揺れるぞ!」と言っていたけれど、ビール飲んでた私は、運転の疲れで出港後すぐに寝てしまい、はっと起きたら鴛泊港に着いていました。鴛泊港のスーパーで買い出しして、タクシーでキャンプ場に行った。広く整備されたキャンプ場は誰もおらず、テントを張ったのは私だけでした。

10/3 利尻山 登山

 予報では午後から天候が悪くなるので、夜明け前から登ることにしました。ヘッドランプで出発し、夜が白み始めるころ樹林帯を抜けた。振り返ると眼下に海が広がっていました。長官山から眺めるオホーツク海や礼文島の眺望は申し分ないけれど、残念ながら頂上は雲に覆われていて見えません。

 9合目からは、所々、雪というか霜が降りていて寒い。頂上直下は急峻な溶岩の痩せ尾根。辿り着いた頂上はガスっていて、視界は全然ありません。最南の宮之浦岳に続いて、最北の利尻山をゲットできて、この山旅の第一目標を果たせたのですが、寒いので祠の前で写真だけ撮って下山しました。降りてくると晴れ間が広がり、麓の樹林帯はすっかり紅葉していました。

 

3_利尻山利尻山(北峰1719m)の祠はガスの中。

テン場 3:30 ~ 7合目 5:15 ~ 長官山 6:10 ~ 利尻山 7:50 ~ 避難小屋 9:00 ~ テン場 11:15 

10/4 稚内 ~ クッチャロ湖 グルメの旅

 早朝、小雨が降る中をノシャップ岬に行った。雨が止むと曇り空の中に利尻島が見えた。山頂は今日も雲に隠れていますが、昨夜が初冠雪で尾根筋に雪が積もっていい感じ。

 で、利尻山登頂を果たして、この山旅の第一目標を果たした私は、グルメモードにスイッチが切り替わった。朝は漁師さん御用達の食堂で「イクラ丼」をいただき、昼はレトロな雰囲気の稚内副港市場で「海鮮丼」を堪能し、更に、本土最北端の宗谷岬で「ホタテラーメン」を賞味。最後に夜はクッチャロ湖キャンプ場で「ホッケの開き」を焼いて食べました。

 

4_ホタテラーメン本土最北端で「ホタテラーメン」を賞味。

10/5  網走 観光

 この山旅のもう一つの目的は、10代の頃に旅した、北海道の地を再訪することでした。もう断片的な記憶しか残っていないけれど、『流氷』のきらめきを思い出しながら、能取岬から二ツ岩までオホーツクの海岸をドライブしました。網走市街に入り天都山へ向かった。実はその昔、雪が降る中、タクシー運転手の「どこでも行くよ!」との返答に天都山へ行ったことがあります。何もない丘の上に小さな展望台があって登ったけれど、雪で展望は望めず、白一色の世界だったように記憶しています。

 再訪すると、今は山上全体が公園と観光スポットになっていて、小さな展望台は立派な『オホーツク流氷館』に生まれ変わっていました。屋上の展望台に上がると、目の前に、新雪に覆われた『斜里岳』の雄姿が飛び込んできた。観光モードから山モードにスイッチが切り替わりましたね。明日は好天の予報。予定にはないけれど、これはぜひとも登っておかねばならない。

10/6 斜里岳 登山

 快晴の中、清岳荘から一の沢沿いに登り、下二股の分岐に出た。登りルートを旧道にとりましたが、滝が多くてもろに沢登り。ツルツルに磨かれた溶岩の滝の横側を登って行きます。難しくはないけれど、スリップしたら滝つぼどころか、あの世に一直線。自分にしたら変化があって面白いけれど、百名山ハンターのジジババには厳しいのではないだろうか?

 上二股から、ダケカンバをくぐりながら沢の源頭を抜け稜線に出た。紅葉が綺麗で所々に雪が残っていました。ほどなく斜里岳頂上に着いた。快晴無風で360度の大展望、清里の農耕地帯、オホーツク海、知床連山の眺めは素晴らしい。

 

6_斜里岳斜里岳(1547m)山頂のケルン。

 帰路は上二股から新道を降りた。「竜神池」は湧き水の小さな池で、とても綺麗で透明で底まで見える。そこから先はハイマツの尾根を辿り峠に出た。見晴らしは良いけれど「熊見峠」なる地名に引っかかります。一応、熊避けの鈴を鳴らしているものの、いかにもてな感じで早々と通過した。

 清岳荘 7:45 ~ 下二股(旧道)8:35 ~ 上二股 10:10 ~ 11:00 斜里岳 11:15 ~ 12:00 上二股(新道) ~ 13:40 下二股 ~ 14:20 清岳荘

10/7 知床 ~ 納沙布岬  観光

 この日は知床五湖を散策。知床半島を横断して、その昔旅した風蓮湖、納沙布岬を再訪しました。今は岬もすっかり変わってしまって、立派な北方領土返還モニュメントが建てられていました。ただ、灯台はそのままの姿だった(と思う)。双眼鏡が備え付けられていて、貝殻島の灯台とソ連軍の監視所を見ていたような記憶があります。

 で、北方領土問題はおいといて、本土最東端に来たからには、ここでもラーメンを食っておかねばならない。食堂で「花咲ガニラーメン」を注文しました。私、ラーメンオタクではないけれど、このラーメンは絶品でお勧めです。カニの出汁が詰まったスープが美味です。

 

7_カニラーメン本土最東端の「花咲ガニラーメン」は絶品!(観光ガイドより)

10/8 大雪山・層雲峡 観光

 早朝、層雲峡に近づくと、見上げる大雪山系は新雪をまとっていました。予定では明日、層雲峡ロープウェーから黒岳を経て旭岳に登つもりで、冬山装備も持ってきたけれど、ちょっとためらう。予定を変更して、明日は旭岳ロープウェー側からピストンすることにしました。そうなると、この日は層雲峡観光になり「流星の滝」「銀河の滝」を見学しました。冬に凍結したこの滝をダブルアックスで抜ければ爽快だろう。

 

8_層雲峡 層雲峡『銀河の滝』冬にこの氷瀑は登りたい!

10/9 旭岳 登山

 ロープウェーで一気に姿見まで行き登山開始。旭岳は噴煙があがる活火山で、溶岩のガラガラ道を登って行きます。昨日は快晴だったけれど、今日はあいにく雲っていて肌寒い。この日は連休で登山者が多く、外人シルバー軍団のツアー登山者(?) が多いのに驚いた。彼らは寒さに強いのだろうか、元気なもんです。

 

9_姿見池から旭岳を望む。

 順調に登り続けると9合目から雪が現れ、頂上は、所々地肌が露出しているものの、雪で覆われていました。残念ながら曇っていて眺望は今一つです。今度来るときは、旭岳からトムラウシを経て十勝岳まで縦走したいものだ。寒いので写真を撮ってすぐに下山。姿見池から散策コースを巡り駅に戻りました。

 

10_旭岳山頂北海道最高峰、大雪山系・旭岳(2290m)。

 ロープウェー姿見駅 8:30 ~ 姿見池 9:00 ~ 旭岳 11:30 ~ 姿見池 12:50 ~ 姿見駅 13:30

10/10 富良野 観光

 朝方、雨は小止みになりましたが、十勝岳は濃いガスにつつまれており、この日は富良野観光にしました。まずは定番の『ファーム富田』のラベンダー農園を訪れ。その後、『北の国から』のロケ地を訪ねました。いい歳したオッサンが、一人で名作ドラマの聖地巡礼など、内心「カッチョ悪いなあ~・・・」と思っていました。が、他の観光客からは、熱心なファンと思われていたのかも知れません。

 私、『北の国から』のリアル世代で、未だに根強いファンがいることは承知しています。が、実はこのドラマ、観たこと無いんですわ。「厳しくも美しい大自然と共に、逞しく生きる一家の絆・・・」と謳われれば、カッコ良く聞こえます。が、アマゾンの開拓村で酷い目にあった身としては・・・。そのうちレンタルDVDを借りて、感想を会報連載に書こうかな。

 

11_北の国から丸太小屋を諦めた五郎が、コツコツ作った石の家。

10/11 十勝山麓 ~ 苫小牧出港

 朝、雨は止んでいましたが、天候は今一つで曇っていて十勝岳はガスの中。取りあえず噴煙を見ようと、望岳台から溶岩の道を散策しましたが、頭の中は温泉モードに切り替わっていました。

 

12_十勝岳望岳台から十勝岳を望むが・・・。

  吹上温泉の露天風呂でほっこりしていると、雨がポツポツ降って来ました。道南は明日も雨の予報。明日晴れるならもう一日残って、幌尻岳や日高の牧場も見たかったけれど、雨では仕方ありません。苫小牧から帰ることにしました。乗船時間が夜のため、雨の中、白老町のアイヌ民族博物館・ポロトコタンを訪れた。アイヌ伝統文化の歌や踊り、剣の舞や伝統楽器の演奏を観て、北海道を後にしました。

  北海道の山に登ったのは初めてでした。緯度が高いから2000m級の山が、北アルプスの3000m級の山に匹敵します。そしてなにより、日本離れした手つかずの大自然が残っているのが魅力です。夏の縦走もしたいし、知床や日高の秘境も訪れてみたい(ヒグマさえ避けられたら)。そして、厳冬期は無理にしても、残雪期にぜひ利尻山を再登して、本峰 (1721m)を踏みたいと思っています。

  ついでながら、この山旅で、日本最北端と最東端のラーメン店を制覇(?)したから、次は最南端の波照間島と最西端の与那国島のラーメン店を食べ歩いて、最後に、にっぽんのてっぺん富士山頂で、ご来光を拝みながらカップラーメンを食おうと、半分冗談、半分本気で企んでいます!? (ナッキーニャ)