そこに立った時に感じる威圧感と圧倒的な山のスケール。そして嶮しくもありつつ、美しさを兼ね備えた景観に、自然と畏敬の念を抱いてしまう場所、それが谷川岳一ノ倉沢。私が最も心惹かれる山。

条例では2月末日までは、入山しないように努めなさいと謳われているが、禁止はされていない。
資料も3月のものばかり、2月の谷川ってどうなってんねん?行く前からプレッシャーはかなり大きかった。初めての冬の谷川遠征。


(一ノ倉沢全景)



一日目は天候判断により、スキーと偵察に変更。二日目に東尾根を持ってくる。これは大正解。
AT日、2時間で登らなくてはいけない一ノ倉沢出合からシンセンのコルまで3時間30分かかった。かかり過ぎ!9時までにはシンセンに到着していないと撤退することを決めていた。タイムリミット設定時間まで、あと30分なので、行って行けないこともない。
行けたけど、帰りの電車の時間が決まっているので、月曜日に遅れて出社というのは、有り得ない。


現場で進退を決めるのに葛藤した。常なら天候・所要時間・技量的なことに始まり、今まで掛けてきた労力や、この山行をやることで、次に繋がる今後の展開などに想いが錯綜するのだが、今回の決め手はスキー重量からくる行動の遅延だった。
シンセンまでの半ラッセルも影響した。



<シンセンコル上部にて>


「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負け無し」という言葉がある。
登山を勝ち負けで判断するものではないが、あえていうなら、まぐれで登れることはあるが、行けないときは、必ず行けない理由が必ずあるということ。山で敗退してくることは、非常に悔しいことだが、今回は明らかに人間側の問題だ。

山行前に、スキーなんて重いにきまってるし、登りにくいやろと!突っ込みも入れられた。
そんなことわかってるけど、やってやれないことはないと目論んでいた。自分にとって新たな山の登り方を見出したかったので、やる価値があった。これが一ノ倉尾根なら到底無理だが、東尾根経由での本峰ATならいけると踏み切った。結果的には帰ってきたけど、軽量化を一層図れば、行ける範囲にあることが十分に分った。



<烏帽子奥壁と衝立岩>

今回は未知な山域に対しての取り組みの中で、プレッシャーも大きく、非常に獲るものが多かった。また敗退することで見えた今後の課題。冬の谷川岳への扉が、わずかばかりは開けられたように感じた。

また待っていてください。

(N藤)



<晴れ渡る一ノ倉沢 美の極み・・・>