仕立亮一 記
日 時 : 平成10年12月26日~29日
メンバー : 仕立 亮一、新名 健太郎
「黄蓮谷にいこう!」仕立のかねてからの野望であった南アルプスは甲斐駒ヶ岳の黄蓮谷右俣に新名君と行くことになった。最近、フリーばかりで山とは御無沙汰してしまって、道具ばかりか体も錆びついている。若いパワーあふれる新名くんについていけるのか??とても心配だ。(おまえはじじいかあ~)ということで新名くんの下宿近くに26日の19:30に集合した。時間も早いので眠気を感じることもなく、快調に中央高速をぶっとばし、諏訪SAではあやしい100円ガムをほおばりつつ、諏訪南ICで降りる。竹宇神社の駐車場でジムニーの座席をたおして車内で仮眠する。(仮眠といいつつ爆睡してしまったようである。)しかし、ここまでくると朝はさすがに寒く、翌朝は車からあまり出たくなかった。
12月27日
天気は穏やかでよいコンディション。長い黒戸尾根を登る。刀渡りまではほとんど雪がなく、落ち葉のラッセル。荷物が少し重く感じられ、しんどかった。5合目小屋で大休止。かつて日本最難といわれた篠沢七丈瀑も見事に凍っている。沢への下降は小屋の裏手から樹林帯を下りるのであるが、昨年来たときと同様、やっぱり迷ってしまった。あまり右へより過ぎないように左へ左へと赤テープを追っていくのがコツのようである。それでも14:00には無事に千丈の岩小屋にたどりついて、ツエルトを張った。その後坊主の滝まで偵察にいき、坊主の滝を見て「すっげ~」と感動し、ひとしきり氷をしばいて退却する。新名くんのカメラはこの時点でご臨終状態に陥った。
12月28日
4:00起床。飯を食べたが夜が明けず、ヘッデンで出発。ベストシ-ズンだけにほかにも数パーティーいた。出会い15m滝は氷結が甘く、左岸より高巻く。滝壷は轟々と水が流れている。坊主の滝に到着してもまだ夜は明けず、しょうがないのでそのまま登る。薄明かりのもとぼうっと浮かびあがった滝を登るのはなかなかいい感じだ。それにしても黄蓮谷はスケ-ルが大きい。氷が全河幅にわたって凍っているのは異様でもある。坊主の滝を登り終えるころには日も昇り、エンジンもかかってきたようだ。ロープを解いてしばらく歩くと奥千丈の滝に到着。奥千丈の滝の上部は積雪で埋まっており、歩きで通過できた。(最初はそれと気づかずに通り過ぎそうになった)奥千丈の滝を抜けるとそこはもう完全に雪の斜面になっていて、ところどころラッセルが入る。でも基本的にはトレースがあるので情けないことに、それに沿って歩くだけになってしまった。ビバーク予定地のインゼルには9:00AMに到着し、「なんで9:00でビバークしやなあかんねん!!」とツッコミをいれつつ通過する。結局氷はこれで終了して、しばらく歩いていくと、どうやらそこから尾根にあがるルートとそのまま沢筋をつめるルートがとれるようになっていた。雪崩がこわいので、そのまま尾根にあがることにする。雪の積もったハイマツ帯を踏みしめて歩いていくと(けっこうしんどく、長い)甲斐駒、黒戸尾根の縦走路に飛び出した。天気はものすごく良くて無風快晴。もう完全にハイキング気分になって「ここはほんまに冬山か~」などと思いつつ12:00頃に頂上到着。記念撮影のあと黒戸尾根を下山する。途中、ザックの後ろのヘルメットを「じゃま!」とバイルでつついていたたところ、そのままバイルの刃先が目の上を切り裂いてしまい、顔面血まみれになりつつ下山する。新名くんは僕をびびらせないように、「う~ん、だいじょうぶみたいですよ。」と、平静をよそおっていたが、本当はスプラッターなえぐい顔になっていたようだ。(*_*)そんなこととは知らずに五合目小屋まで下山して小屋の中にツエルトをはる。そこで、話を聞いたのだが、どうやら同じ日に黄蓮谷の左俣で事故(滑落、骨折)があったようで、(翌日ヘリが飛ぶということになった。)いろんな情報が錯綜していた。それで次の日、事故をおこしたパーティーの1人から伝言をたのまれて、そいでもって私が遭難者みたいな顔で、「左俣で事故があった、あなたは○○山岳会か?」と下山中すれ違う人をつかまえては聞いていたので、けっこう今考えるとあやしく、怖い。
12月29日
五合目小屋を出発して下山を開始する。刀渡りをすぎると、もう完全に日だまりハイクといった感じで、降りたらなにを食おうかという話になる。(やっぱりカツどんかなあ。)
下山後は駐車場で次の八ヶ岳に備えていろんなものを干した。濃い顔のあやしい奴(??)と顔面に血がこびりついたあやしい奴が駐車場でいろんなものを干している姿はあやしかった。
なにか不完全燃焼のように終わった今回の黄蓮谷右俣であったが、時期的にもう少し早かったほうがよかったのかもしれない。(タイミングが難しい)黄蓮谷右俣はまたしても私の中で課題として残ってしまったのであった。
新名君、どうもありがとうございました。
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