沢登りの山域水系にはこれぞ!っていう沢がある。「ここなら、この沢でしょ」っていう沢。東京にいったらスカイツリーみたいな沢。丹沢なら小川谷廊下とか奥秩父なら甲武信の釜の沢。こういうwebの遡行記録をまんべんなく見て写真よりスケールが小さくてがっかりとか一喜一憂してあの滝にはボルトがあそこは高巻きしてたとかをチェックする腐った根性を持つ私みたいな人が好き好んで行く沢でもある。

朝起きると雨は止んでいた。新宮からまた雲取温泉方面にいって栂の平橋から入渓する。

入渓すぐに最初の滝。どかーん。綺麗なナメ滝。緑のコントラストがすばらしい。

 



 



ところどころへつりったりする。水温はまだまだ低い。



でた!ヤケベグラ。すごいスケール。川幅は小さいのに岸壁の大きさがものすごい。晴れてきた。



こんなに晴れたのも久しぶり。栂谷は南向きの沢なので陽がよくあたるきがした。ヤケベグラは懸垂したらおもしろそう。



ナメも中の谷と違って開けて明るくて気持ちい。



ナメにどかんと大岩。巨大CS?



滑ると釜に真っ逆さまのナメ滝。この沢は意外と夏向きなのかもしれない。



その後特に迷うことなく稜線に突き上げる。烏帽子岩に登って眺望を楽しむ、また少し登って新日本百名山の烏帽子山。一等三角点だった。きのうの子の泊山も一等。山頂からは熊野灘を望むことができる。とてもよい景色。

下山は落ち葉がすべりやすくスピードがでない。俵石という廃村を経由して林道へ。林道は走って駐車場まで、足がつりそうになった。

きのうと同じ雲取温泉に入って那智大社に行く。那智大滝はすごい。すごいの一言に尽きる。確かにこれがご神体になるのはすごくわかる。これを登った人は許せないなぁ。那智大社は神社とお寺がいっしょになっていて結局神社なのかお寺なのかわからなくなる。熊野信仰の奥深さを実感する。

お箸を買ったり那智黒飴を買ったり足早に(?)那智大社を後にして168号線で五條方面へ。阪和道で行くか迷ったが下道で帰ることにした。大阪には8時30分くらいに着くことができた。

 

おまけ:沢と関係ないけど熊野信仰の話

熊野信仰は当時隆盛していて浄土信仰の力とあわさり神仏習合の形がかなり進んだ。民衆は浄土を求めた。浄土すなわち補陀落を目指し那智勝浦の浜から多くの僧侶が小船で太平洋へ旅立った。これを補陀落海渡という。(那智大社で立ち読みした本に書いてあった。)これには驚いた。僧侶は小船の中の脱出できない箱に入り、小船は曳航され沖で縄を切られる。海渡の根本的な思想は浄土信仰としての仏教、熊野信仰としての神道、そして柳田国男の最後の著作「海上の道」にある日本人と海の強い関係性の観念の3つが習合したものだと思った。熊野は世界遺産に指定されている。ユネスコは「紀伊山地の文化的景観を形成する記念碑と遺跡は神道と仏教のたぐいまれな融合であり、東アジアにおける宗教文化の交流と発展を例証する」とある。熊野は世界に例をみない神代の昔の日本の起源から連綿と続き様々な要因と共に醸成された無形の空間を構成しているんだろう。なにか熊野にはパワーを感じた。またいこう。