『巨樹の誘惑 琵琶湖周辺・巨樹の山案内』という本に,比良のコメカイ道には見事な栃があって,峠を東に越えた集落ですばらしい棚田が見られる,とある。写真がいかにも美しい。この峠道は,猪谷の山腹を巻く実に上手く作られた道で,「コメカイ道の名前の通り,山と平地を結ぶ道として,多くの人たちが歩き続けてきたのだろう」と。また,「季節を変えて何度でも歩いてみたいと思う道」とも。
炎暑はあっけなく去ったかのようである。空模様ははっきりしないが,ここは軽く物見遊山といこう。

2008/08/24 朝9時 小雨

朽木栃生バス停からちょっと京都の方に戻って,道標から入山。立派な道標が立つ2箇所の分岐を10時前に過ぎて,予定通り,エアリアマップに「コメカイ道」と記されたルートに進んだ。この先,栃の巨木が並んでいるはずである。






本を片手に,写真と頭上の枝葉を見比べながら歩く。道は想像したほど良くない。濡れた斜面が滑る。米一俵は60Kg。ここを担いで歩くのは難儀なことだ。



進むにつれて踏み跡は怪しくなり,沢に突き当たっては対岸を見回し,倒木を回り込んではうろうろするうち,栃どころではなくなってきた。いま辿っているのは獣道じゃないか,という疑いが高じてきたころ,少々深い沢に突き当たった。下り口もないし,対岸にそれらしい踏み跡も見つからない。諦めて,四つん這いで泥の斜面を登って,20~30 m上の尾根に出た。平坦な尾根上を南下して登山道に出会い,これを使ってようやくササ峠に着いた。
ササ峠に,栃生方面を指して「コメカイ道」と書かれた案内板があった。迷った道はどんなだったかと,その指す方角を探してみたが,3分も行くと,どこが道やらもう分からない。道は荒廃してしまったようである。




ササ峠から北へ地蔵峠に向かうと,すぐに地図にない林道が尾根道を横切っていて,また混乱させられた。ともあれ,雨は止んだ。雨具を脱ぐと風が涼しい。ようやくのんびりした里山歩き。



まだ諦めずに栃の木を探したが,見つけられない。だいたい,栃どんな木であるか,ちっともわかっていない。広葉樹はたくさんあるが,どれも違うようである。
子鹿の後姿を追ったりしながら,道はヨコタニ峠へ。山腹を下って,「畑」集落へ。道中迷った分,里の入り口でほっとした。往時この峠を行き交った人々も,こんな気分だったろうか。



稲穂は黄色くなりかけた頃。この里は聞いていたとおり美しい。





あちこちと眺めて歩き,予定していたリトル比良越えは放棄。バスで近江高島へ。
帰宅後,もいちど首記の本を開いてみると,その簡略ルート図には,栃生から最初の分岐で北に別れ,ササ峠を経ずに直接地蔵峠に向かうルートのほうに栃の木の記号が付いている。このルートは手持ちのエアリアマップ2種いずれにも「コメカイ道」とは書かれていない。自分が通ろうとした南寄りのルートにそう書かれている。どちらが本当か?Web検索してみると,北寄りのルートを「コメカイ道」として歩いた記録のほうが多かった。しかしそちらの道も,ほどほどに荒れているようである。
いずれにしても,このままでは釈然としないので,もういちど北寄りルートを歩かざるを得まい。栃の木のことは調べた。近々行くか,栃の実が落ちるころに行くか。痛む指とも相談だ。

Geff